ヒッグス粒子発見の意義は何か。それは、クォークでも
ヒッグス粒子の発見は、ノーベル賞を受賞した南部陽一郎
ヒッグス粒子の性質を調べる鍵となるのが、約30キロ・メートルの直線状の加速器で電子と陽電子を衝突させる計画の「ILC」(国際リニアコライダー)だ(図3)。
電子と陽電子を衝突させる円形の加速器はこれまでにもあったが、電子を磁場で曲げるときにエネルギーが失われる欠点があった。ILCは、直線にすることでこの欠点を補おうとするものだ。昨年末には設計書も完成した。
日本では、北上山地(岩手、宮城県)、脊振せふり山地(福岡、佐賀県)が建設候補地に挙がっており、産学官連携による誘致の取り組みを進めている。設計書もでき、いまは欧米、日本の政界や産業界のサポートもある。今後2~3年が、日本に誘致する千載一遇のチャンスだろう。
ILCを日本に誘致した場合の予算はどうなるのか。建設費の負担は、国民1人あたり年間でラーメン1杯程度に収めたいと思っている。こうした大型の研究計画は、国民の理解があってこそ実現できる。
素粒子研究は、社会の役に立たないだろうという意見がある。だが、宇宙や素粒子の研究がもたらした技術は多い。たとえば、アインシュタインの一般相対性理論を証明するためにつくられた正確な原子時計は、カーナビなどに利用される全地球測位システム(GPS)につながった。加速器技術の進展は、医療用技術などのコストダウンにもつながる。
ヒッグス粒子発見をきっかけとした新しい物理学を切り開くには、精密な実験が可能なILC建設は必須だ。我が国への誘致が国際的にも期待されている。
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